Wednesday, February 24, 2010

【書評】リスク・リテラシーが身につく統計的思考法

 表紙には、有名な「モンティ・ホール問題」があしらわれている。
「あるゲームに参加してるとしよう。3つの扉から1つを選ぶのだ。1つの扉の裏には景品の自動車があり、残りの2つには山羊がいる。1番を選んだとする。そうすると、景品が何番にあるかを知っている進行役は、3番を開き、そこには山羊がいる。そして、司会者はあなたに問う。1番がファイナルアンサー?」
 間違えても、地団太踏んで済まされる。しかし、次のような問題ならどうだろう?
ある地域で40~50歳の自覚症状のない女性が乳癌に罹っている確率は0.8%。乳房X線検査による検診を受けたとしよう。乳癌があれば陽性になる確率(感度)は90%、乳癌がない場合に検査が陰性になる確率(特異度)は93%である。陽性の検診結果が届いた。あなたが実際に乳癌である確率は?
 本書では、このような医学的な問題やDNA鑑定、指紋分析などの法的分野の事例が俎上に上げられている。そして、実際に米国やドイツの医師や法律家でさえ、検査後の確率の計算ができない実態を暴いている。文庫化される前のタイトルが「数字に弱いあなたの驚くほど危険な生活―病院や裁判で統計にだまされないために」だった所以である。しかし、若い医者の名誉のために付け加えれば、近年はわが国を含めた先進諸国では、医学教育で臨床疫学が導入されており、オッズにベイズ因子を掛けると事後確率の更新が簡単にできるという知識[1]をもって卒業する。
 しかし、インフォームド・コンセントとなると、ベイズ因子では説明が困難だ。市川は、円グラフを使用して考えることを提唱した[2]が、本書では「自然頻度」を使用することを推奨している。そうすると、古い医者[3]や弁護士でもきちんと事後確率が計算できるようになることを示している。そして、裁判員制度が導入された今日では、市民一人一人がリスクリテラシーの技法を身につける必要がある。"'In this world nothing can be said to be certain, except death and taxes."(この世で確実だと言えるものは、死と税金以外にない。)というベンジャミン・フランクリンの言葉を引いて始まる本書が、カントの"Sapere aude"(知る勇気を持て)と言う言葉で終わっているのも宜なるかな。
 巻末に用語集がまとめられている配慮が嬉しい。欲を言えば、文中のケースと解答を、巻末に抜粋しておいてくれれば、提唱する技法を身につけるために有用であったろう。星が一つ欠けた理由である。
  1. Steven McGee, MD Simplifying Likelihood Ratios J Gen Intern Med. 2002 August; 17(8): 647–650.[PDF]
  2. 考えることの科学―推論の認知心理学への招待 (中公新書)
  3. Gigerenzer G, Edwards A. Simple tools for understanding risks: from innumeracy to insight. BMJ. 2003 Sep 27;327(7417):741-4. [PDF]

Tuesday, February 16, 2010

Frank's signの取扱い方

人名を冠した徴候の一つ、Frank's signを御存知だろうか?耳朶を横切る深い皺があれば、冠動脈疾患を示唆するというSanders T. Frankという呼吸器内科の医師が1973年にNEJMに報告した身体所見である[1]。今では、Wikipediaにも記載があるが、私は病院勤務時代に麻酔科の先生からの耳学問で知った。早速、その感度、特異度を検索し、いまだに「皺の感度は、どっきりパパ」という語呂合わせで、それぞれ48%、88%と覚えている[2]。しかし、残念ながらその知識が役に立ったことはないし、信じてもいない。というのも、胸を苦しがる患者さんを前に感度48%では、心筋梗塞を除外し切れないってのもあるし、統計学を学ぶようになって、この徴候を支持する論文が、年齢という基本的な交絡因子さえもコントロールせずに議論していることを知ったからだ。そして、昨年9月、「シカゴ・リーダ」という新聞のセシル・アダムズ氏の名物コラム"The Straight Dope"で揶揄される記事が書かれるに到る。奇しくも、このコラムの連載開始が、1973年なのでした。

1. Frank ST (August 1973). "Aural sign of coronary-artery disease". N. Engl. J. Med. 289 (6): 327–8.
2. M. Motamed, N. Pelekoudas "The predictive value of diagonal ear-lobe crease sign". Int J Clin Pract, Vol. 52, No. 5. (g 1998), pp. 305-306.

Wednesday, February 10, 2010

本ブログの再生

放置していた本ブログを再生しようと思う。内容としては、プライマリケア(風邪、急病、薬、怪我、心の病)や漢方のこと、ツールとしての英語、ubuntu環境Rによるネットワーク分析、Android端末のことを話題にする予定。