Wednesday, September 29, 2010

【書評】日本人のための戦略的思考入門

 岩上安身氏の「孫崎享氏のインタビュー」によって本書を知った。このインタビューを通じて、日米安保条約自体が欺瞞に満ちていて、あくまでもアメリカの利益に即した不平等条約であることを知った。本書でも、その事実を丁寧に解説している。その重複部分以外の、前半部戦略に関する総論が非常に有用。戦略論の歴史に触れ、参考図書の紹介をしてくれている。 相互確証破壊 (mutual assured destruction)などは「狂った」システムくらいにしか考えていなかったが、必然的に到達し確実な核戦争予防策であり、それゆえに「核の傘」は幻想であることが理解できた。また、繰り返し述べられている歴史、将来のビジョン、大局観の重要性は、医師が日々行うケーススタディや予後予測、総合的な判断と共通するものがあり頷ける部分が多い。
 冒頭の部分で「囲碁十訣」を引き、古今東西の著名な戦略家に囲碁のファンが多いことの記載がある。著者は日本人が戦略的思考に欠けることを指摘しているが、同時に囲碁の普及で戦略的思考を鍛えることができる可能性があることを指摘しなかったのが不思議でならない。個々人の能力よりも、むしろマスコミ報道や意思決定機関での横並びの同調主義が日本の戦略行動の妨げになっているのではあるまいか。

Friday, September 24, 2010

Shakira、新アルバム11月リリース

 BillboardのLatin Songsのチャートを眺めていたら、Julio Iglesiasの次男、Enrique Iglesiasの曲が10位以内に2曲入っている。堂々トップの"Cuando Me Enamoro"は、ドミニカのシングーソングライターで"Bachata en Fukuoka"という福岡での公演での想い出を曲にした作品もあるJuan Luis Guerraと共演している。8位の"I like It"はスペイン語版"We are the world for Haiti"("Somos El Mundo Por Haiti")の後半レゲトン部分の導入を務めたPitbullとの共演作品。曲名は、Facebook人気に乗じたのかな?

 25位にレンジを広げると、シャキーラの曲が2曲ランクインしている。22位に新曲"Loca"で、前回31位からの急上昇、ドミニカのラッパーEl Cataとの共演でラテンの世界に回帰している。23位にはワールドカップ公式ソングの"Waka Waka"、16週にわたりランクインしているが、主催国南アフリカのバンド、Freshlygroundと共演したアフリカ色の濃いものだった。Amazon.co.jpでは、11月3日に、これら2曲が収められたアルバムが日本でも発売されるらしい。アルバムのタイトルは、"Sale el Sol"「サレ・エル・ソル」、陽は昇るという意味。

 コロンビア生まれの彼女だが、父親はレバノン系マケドニア人、母親はカタロニア系ということもあり、その音楽性はラテンを超えている。例えば、政府とマスコミによるイラクとの開戦キャンペーン展開中、ジョン・レノンの"Imagine"さえ自粛となる世相の合衆国でアラブ色の濃い"Ojos así"を引っさげて反戦をテーマとしたマングース・ツアーを敢行し、北アメリカでのファンを獲得している。

 アメリカ大陸は言うまでもなく、ヨーロッパ、イスラム諸国、アフリカと進撃し、その音楽性の版図には陽が落ちることはないという感じですね。(En El Imperio de Shakira nunca se pone el sol.)

【書評】そこまで言うか!

 時代の寵児のお三方の対談なので、表紙に写っている尊顔を拝するために手にとってみてもよい。私の場合、書店で手にとって、購入するかどうか、かなり迷った。ちょうど、エロ本を買うか買うまいか逡巡する心境である。堀江氏や勝間氏の本は、なぜか「下品」な感じがしてしまうのだ。しかし、隠れて時々ネットで彼らのブログに眼を通したりはするし、考えは必ずしも自分と相対するものでもない。にもかかわらず、何故かれらの著作に品の無さを感じてしまうのか?その理由を探るべく本書を買ったのでした。

 読後、「下品さ」の源泉は何だろうと問うてみた。まず、「下品さ」とは何かを考えると明確な定義を出すことができない。せいぜい「個人的な感性から眉を顰めたくなるもの」くらいのものだろう。次に、私が何を下品に感じたかであるが、堀江氏などは生活保護でもそれなりに生きていけると発言しているので、必ずしも私の解釈は正しくないのだが、ただ全体として、「お金=幸せ」という雰囲気が、堀江氏と勝間氏の発言の行間には漂って感じられたことである。これは一種の妬みに由来するものだろう。つまり、私が感じる下品さは、彼らに由来するのではなく、自分の無意識に投射された彼らの像に引き起こされるものなのだ。実際、若い頃はエロ本の方が成功本より心理的抵抗が大きかったが、現在では逆転しているような気がする。妬みとか欲望を抑圧するエネルギーとかが、その欲望をあからさまに語る他者に向けられたものが、「下品さ」の由来と思われる。そう、意識上は現在の生活に満足している私も、実証不可能であるが、無意識では、「もっと金が欲しいよ~」と悶えているのかもしれない。

 全体を通して議論というよりは、井戸端会議。本来、ファシリテータとして参加しているはずの堀江氏の暴走する場面が多く、最年少の西村氏がいなす感じでおしゃべりは展開される。はじめは、「デキビジ」のテレビ討論を受けて、最年長の勝間氏をいじる形で話は始まるが、終りになる従い、親や学校、マスコミ、既得権益層に対する抵抗という形で大団円を迎える。デフォルトの人生から外れ、自分で考え、人のやってないことをする、つまり、「逆張り」の人生が、金儲けの要諦ということらしい。しかし、新規事業は、千三つと言われ、0.997^300 = 0.406020062で300回試行錯誤して、1回でも成功する可能性は6割ってのが昔からの経験則の言うところだし、行動経済学の理論でも、単純な逆張りで儲かるのは、あくまでも運が見方した場合に限られるらしいので、勝者の後知恵って感じは否めない。つまり、成功者版グータンヌーボーってところか。

 タイミングよく、「米国科学アカデミー研究紀要(PNAS)」の最新号にプリンストン大学のカーネマン教授の幸福と収入の関係についての論文が掲載されている。著者は、2002年に、行動経済学の研究でノーベル経済学賞を受賞された認知心理学者である。タイトルはずばり、"High income improves evaluation of life but not emotional well-being"(高収入は回顧的評価を改善するが、現在の幸せ感は改善しない)というものだ。45万人もの対象者をインタビューし、「主観的幸福度(subjective well-being)」を2種類の方法で計測している。1つ目は「人生評価(live evaluation)」、人生を回顧した時の満足度、達成感を示す指標と言えよう。2つ目は「感情的幸福度(emotional well-being)」、今心から湧きでてくる快・不快の感情、一般的な幸福感とも言える。その結果であるが、前者が収入の対数とほぼ比例したのに対し、後者は7万5000ドルまでは世帯収入の対数とほぼ比例したものの、そこで頭打ちとなった。付け加えると、「人生評価」は収入の他、学歴と相関、高学歴者ほど人生に対する満足感が大きく、一方、年収よりも強く「感情的充足度」に寄与した因子は、健康、介護者の有無、離婚、独居などであったとのこと。メキシコでは乾杯の挨拶を"¡Salud, Dinero y Amor!...y tiempo para disfrutarlos!"(健康、金、愛、そしてそれらを享受する時間に!)とかするらしいが、それを検証した論文とも言えるでしょう。

Sunday, September 19, 2010

【書評】オールアバウト・ペネロペ・クルス

9月10日金曜ロードショーで「バンテージ・ポイント」を観た。その中に出てきたサラマンカ警察の刑事役の俳優、どこかで見た記憶があり、ググってみた。そう、アレハンドロ・アメナーバル監督の友人であり、「オープン・ユア・アイズ」の主演をしていた役者だ。ペネロペ・クルスが共演している。懐かしく思いAmazonでDVDを探してみたら、なんとこの監督の作品すべてが収められたDVDボックスがあるではないか!早速、購入し、9月17日、妻が選んだ「海を飛ぶ夢」を観た。若くして四肢麻痺になり、30年近く寝たきり生活をして安楽死を選んだ実在の人物を描いた作品。なんと、主演はハビエル・バルデム。ペネロペ・クルスと今年7月結婚した役者だ。これまでアルモドバル監督のお気にぐらいにしか思っていなかった彼女が、こんな経過で身近になり、手に取った。 学生時代によく聴いていたMecanoのPVに出ていたのですね!さらにWikipediaによると、私の好きなコロンビアの歌姫Shakiraのお友達だそうで、一気に気になる女優の地位を占めてしまいました。まさにちょっとした視点が加わることで物事の見え方が変わってしまう「バンテージ・ポイント」ですね。
 そういうわけで、この本を読むことに相成ったのです。経時的にスペイン時代、アメリカ時代、VOLVER(帰郷)とまとめられており、続編というか、出産後の活躍が楽しみになりました。

Friday, September 17, 2010

【書評】ウェブで学ぶ―オープンエデュケーションと知の革命

 近年、スタンフォードでのスティーブ・ジョブズの卒業記念講演、ランディ・パウシュ教授の「最後の講義」、最近ではマイケル・サンデル教授の講義などYouTubeに公開される上質なネタが増えてきていることを感じていた。それをオープンエデュケーションの潮流として提示してくれる一冊。さらに巻末には、本文で触れられたサービスのリソースがまとめられている。ウェブの現状をその経緯を含めて描く筆の巧みさは氏ならではのものである。
 氏は、はじめのほうでローカルウェブとグローバルウェブの分裂を指摘し、後者がアメリカ特有の心性に立脚することを論じている。確かに、世界各国にローカライズされたウェブと世界中で利用されるウェブとがあることは事実だが、後者が特異的なものでカリフォルニアン・スピリットとかいう抽象的なものから発するという意見には同意しかねる。Web2.0の嚆矢とされるdeliciousとか、Flickrはカナダ発のサービスだし、多くのオープンソースプロジェクトはアメリカ外に端を発している。むしろ国境を越えたユニバーサルなプロジェクトでは英語が共通語になることが自然だし、そこへの参画に当たって、言葉の壁がない上に資本や技術の集積のあるシリコンバレーが圧倒的に有利なのは、自明の理のように思う。
 本書で紹介されているOpen Course Wareは、日本語はじめ、スペイン語や中国語によるものにも触れられている。しかし圧倒的に国境を越え拡散し易いのは英語によるものである。各国の音楽事情も本国の音楽と英語圏の音楽が併存しているのと同じことである。音楽の世界では純粋に音楽として楽しんだり、訳詞を読んで楽しんだりということが可能である。しかし、教育の場合、最近では、ソーシャルなサービスを介して字幕や訳がついた動画も得られるようになってきているものの、それは有名どころに限られ、英語を聞く能力の有無で教育機会に差が付く時代になったことを実感する。今後、日本の英語教育は、英語「を」学ぶ時代から英語「で」学ぶ時代になっていかざるを得ないのではないだろうか。さらに論を飛躍させると、コンテンツの発信もアメリカ以外からの英語のものが増えるに従い、EnglishはGlobishとなっていくにちがいない。
 本の内容とは無関係なのだが、動画のコンテンツの収集には、Adobe AIR Contest 2010で優秀賞受賞の"DigiShelf"がOSを選ばず便利かもしれない。

Wednesday, September 8, 2010

Google Chromeの機能拡張"Start!"が便利な件

"Start!"というのは、Chromeのスタートページを代替えする機能拡張です。新規登録ページが2つのパネルで表示されます。左パネルは、登録の新しい順で、右パネルは、ブックマークツールバーの順で表示されます。2つのアクセス方法があることで、目的のページへの到達が格段に容易になります。登録数が多くてもそれぞれスクロールできますし、ブックマークの整理を工夫すれば、さらに使い勝手がよくなりそうです。あと左下にフィードの購読を1件表示できます。複数のフィードを表示させたいときは、GoogleReaderのBrowse for stuffでBundleを作っておくと便利です。厚生労働省が発行する5つのフィードをまとめて表示させてみました。背景を変えられるのもいいです。写真をPicasa Web AlbumやFlickrなどオンラインで管理していれば、好きな写真を表示できます。上は、大内宿の写真です。

Saturday, September 4, 2010

好きな言葉たち

読書やブラウジングで出会った言葉でお気に入りをGoogleDocsに貯め始めた。10個貯まったので記念に。
  1. 病從口入,禍從口出。"太平御覽" 病は口より入り、禍は口より出づ。
  2. Все счастливые семьи похожи друг на друга, каждая несчастливая семья несчастлива по-своему. - Лев Николаевич Толстой "Анна Каренина" 幸福な家庭は皆同じように似ているが、不幸な家庭はそれぞれにその不幸の様を異にしているものだ。
  3. Τὰ παθήματα τοῖς ὰνθρὼποις μαθήματα - Αἴσωπος 災難は人間たちにとって学問である。
  4. Guérir parfois, soulager souvent, consoler toujours. - Ambroise Paré 時に癒し、しばしば和らげ、常に慰む。
  5. Errare humanum est, sed perseverare diabolicum, et ignoscere est divinum. 過つは人の常、過つを続けるは悪魔の業、許すは神の業
  6. Nur ein Idiot glaubt, aus den eigenen Erfahrungen zu lernen. Ich ziehe es vor, aus den Erfahrungen anderer zu lernen, um von vorneherein eigene Fehler zu vermeiden. - Otto von Bismarck 愚者は自分の経験から学んだことを疑わない。私は自らの誤りを避けるために、他人の経験から学ぶことを好む。
  7. Yo soy yo y mi circunstancia, y si no la salvo a ella no me salvo yo. - J. Ortega y Gasset "Meditaciones del Quijote" 私は、私と私の環境である。 そしてもしこの環境を救わないなら、私をも救えない。
  8. 시작이 반이다. 始めたら半分終わりも同じ。
  9. Da ora combatte né per il prossimo e non è qualificato per parlare del futuro. - Roberto Baggio 今を戦えない者に、次や未来を語る資格はない!
  10. Laugh, and the world laughs with you; Weep, and you weep alone. Ella Wheeler Wilcox "Solitude" 笑おう、そうすれば世界が貴方と共に笑う: 泣きなさい、そうすれば貴方は一人だ。

Friday, September 3, 2010

最近のubuntu環境


自宅のパソコンでは、ブラウザを、Chromium Daily Buildにしている。インストールは、下記の呪文。何よりも速いこと、他のパソコンと環境を同期できること、最近ではGmail、Twitter、Google Docs、Google Readerなどのオンラインサービスをアプリ化出きるようになり、Firefoxには戻れない予感。
sudo add-apt-repository ppa:chromium-daily/ppa
sudo apt-get update && sudo apt-get install chromium-browser
日本語入力は、GoogleのMozc。ubuntu次期バージョンでは、リポジトリが追加されるらしい。ポッドキャストは、Audacious+gPodderで聴いているが、ポータビリティを考えるとnewsbeuterのように端末で動くソフトをgnome-scheduleとかで予約して自動的にiPodにダウンロードしてくれるようにしたほうが、ものぐさな私にはいいのかも。主な医学関連ポッドキャストのリストを下に上げておくが、さらには、FreeMedicalPodcastsを参照してください。
  • New England Journal of Medicine http://podcast.nejm.org/nejm_audio_summaries.xml
  • The Lancet http://podcast.thelancet.com/lancet.xml
  • British Medical Journal http://podcasts.bmj.com/bmj/feed/
  • Annals of Internal Medicine http://media.acponline.org/feeds/annals.xml
そして、文献管理はMendeley、統計解析はR、文書作成はTexWorks。それにしても日本語TeX環境の構築もっと楽にならないものか?なんとか、dvipdfmxを日本語を通せるようにしたが、再現する自信はない。もっと基本的なことをしっかりと勉強しなきゃならんのだろうな…その割に、アクセサリーには、zshとか、emacs23ESSYaTeXw3mWanderlustnewstickertwittering-modeとか、通ぶってみたりする。ここ数年スライドによるプレゼンの機会はないが、powerdot+Impressive!なども使えるようにしておきたい。年賀状もTeXで宛名書きが出来れば便利ですね。気晴らしは、Quarry+GnuGoで囲碁…そんな環境を「ライブCDの部屋」のLxubuntu10.10が公開されたら、それをベースに独自CD化しようかと目論んでいる。

職場では空いたパソコンを持ち込んで、休憩時間を使って、ORCAOpenDolphinの電子カルテ試用環境を構築しようと試行錯誤。