Friday, November 7, 2014

アドラー心理学

何の気はなしに評判で買った本。研修医の頃小児科の指導医の先生を介してアドラーの名は知っていたが、その実に関して無知であった。

8年前に今の職場に来た頃、子供を診る機会が増え、母親とのコミュニケーションにストレスを感じていたころに読んだ「よくわかる、こどもの医学―小児科医のハッピー・アドバイス (集英社新書) 」のなかに、小児科医との相性の項目があり、そこに引用された著者の先輩からの教えの「キミが10人の患者さんを診て、3人のお母さんに治療について納得してもらえたら良い小児科医になったということ。5人だったら名医と呼んであげよう。10人みんなが褒めてくれたらキミはチャランポランな馬鹿医者だ。」という言葉に救われた記憶がある。

今から思えば、「課題の分離」という概念で説明できるものだったのですね。その他にも心に刺さっている名言の数々が、アドラー心理学で提唱されている概念と符合することに思い当たるのです。例えば、有名なところでは、「ニーバーの祈り」やケント・M・キースの「逆説の10か条」などがそうでしょうし、個人的にお気に入りの言葉の例を下に挙げてみます。

パリ五月革命の壁の落書きにあったとされる"Solitaire d'abord solidaire ensuite et enfin."(まず孤独になり、次いでそして最後に連帯する)などは、劣等感(Minderwertigkeitsgefühl)に苛まされ孤独な個人が共同体感覚(Gemeinschaftsgefühl)を獲得しようとする精神を上手く描写している。

ゲランの香水の名前にもなったサンテグジュペリの小説「夜間飛行」でのリヴィエールのセリフ
"Voyez-vous, Robineau, dans la vie il n'y a pas de solutions. Il y a des forces en marche : il faut les créer et les solutions suivent."(わからないかね、ロビノー、人生に解決策などない。前に進む力があるだけだ。つまりその力を作り出すしかない。そうすれば解決策はあとからついてくる。)は、勇気(Mut)や勇気づけ(Ermutigung)について語っているようだ。

今回、この本を読んでみて、もっと早くにアドラー心理学に親しむことができたなら、遠回りをせずに済んだのにという後悔の念に堪えないが、後悔自体がアドラーの考えに反するか。第一次世界大戦100年後の今年に出会えたことで、良しとするか。